こんにちは。矢木田です。
いよいよクリスマスですね。キラキラ光るイルミネーションやクリスマスソング、ケーキの広告など、楽しいものがたくさんでワクワクする季節です。
欲しいものや、買いたいものもたくさん! なんて人も多いはず。
でも、楽しい気分とはうらはらに、お財布の中はさみしかったりします……。
お札と小銭の残りを数える時、ふと、О・ヘンリーの『賢者の贈り物』の冒頭を思い出します。
一ドル八十七セント。それだけだ。
(大久保康雄訳『О・ヘンリ短編集㈡』新潮文庫、1969年)
はじめてО・ヘンリーを読んだのは小学生の時で、1ドル87セントがどのくらいの価値なのかわかりませんでした。
ですが、主人公の住んでいるアパートの家賃は週8ドル。ひどくはないが、裕福でもなさそうな部屋です。
また、いろいろと値切って大切に貯めたお金であることも書かれているため、少ないながらも大事な1ドル87セントであることがわかります。
いきなりお金の話から始まる『賢者の贈り物』、とてもほっとする短編で、クリスマスのお話でもあります。有名なのでご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、簡単にあらすじを紹介します。
主人公デラは、1ドル87セントしかお金がないと嘆いています。というのも、明日はクリスマス。愛する夫ジムにプレゼントを買ってあげられるお金が1ドル87セントしかないのです。
ところで、この夫婦には宝物が二つありました。ジムの金時計と、デラの美しい髪です。
デラは自分の髪を売り、ジムのクリスマスプレゼントを買うことにしました。そして、ジムの時計にぴったりのプラチナの時計鎖を買いました。家に帰ったデラは、短くなった髪を巻き、ジムの帰りを待ちます。
帰ってきたジムは、デラを見てひどく動揺している様子です。それもそのはず、ジムはデラがあこがれていた櫛のセットをクリスマスプレゼントに買ってきたのです。自分の時計を売って……。
タイトルや作中にも「賢者」と、ありますが、これは東方の三博士とか賢者たちと呼ばれる人たちで、イエスが誕生した際に贈り物をした人たちです。新約聖書の「マタイによる福音書」には、黄金、乳香、没薬を贈り物としてささげたとあります。
東方の賢者たちとか、相手に贈り物をするために大切なものをなくしてしまった二人はむしろ愚かなんじゃないかとか、難しいところもありますが、とにかくデラとジムの相手を想う気持ちが尊いので、一度読んでみることをお勧めします。
髪が短くなってジムに嫌われたらどうしようと思い悩むデラはめちゃ可愛いし、ジムはデラの短い髪に驚きつつも「髪を剃るとか切るとか洗うとかで、僕の愛している妻を好きでなくなるわけがない」とカッコいいことを言います。
二人がお互いが大好きというのが伝わってきます。それも含めて読んでいただけたらどの辺が「賢者」だったのかなんとなくわかると思います。そして何回読んでも萌えました。
短編なのでちょっとしたプレゼントにもいいかもしれません。
О・ヘンリーの作品の男女は、推せるカップルが多いのでいろんな方の訳で読んでみるのも楽しいです。訳者の方の解釈も楽しめます。
またこのブログでもО・ヘンリーの作品は取り上げたいと思ってます。
皆さんも、すてきなクリスマスをお過ごしください。